上方漫才協会が主催する『第十回上方漫才協会大賞』の発表イベントが、1月13日(月・祝)に大阪・なんばグランド花月で開催されました。今回は、第十回の節目。「話題賞」「劇場賞」「新人賞」「文芸部門賞」、そして新たに設立された「上方漫才協会特別功労賞」など、若手芸人を称える受賞者発表が行われました。
そして、記念すべき第十回の大賞に輝いたのはドーナツ・ピーナツ! 努力を惜しまず、コツコツと実績を重ねてきた2人が、ノミネートされた46組の頂点に立ちました。
歴代大賞受賞者が10回目の節目に大集合!
オープニングでは、10周年とあって過去の大賞受賞者が揃い踏み! ダブルヒガシ、天才ピアニスト、すゑひろがりず、ミルクボーイ、ミキ、見取り図、トット、吉田たち、そして初代大賞受賞で、今回もMCを務めるアインシュタイン・河井ゆずる(※稲田直樹は体調不良により欠席)と、歴代の大賞受賞者がレッドカーペットにずらりと並ぶさまはまさに壮観! その光景に、上方漫才協会の中田カウス会長は「これだけ揃うことはこれまでになかった!」と顔をほころばせます。
一方そのころ、NGKの3階ロビーでは、「新人賞」にノミネートされてネタバトルに挑む芸人6組が待機中。緊張の模様を、令和喜多みな実・河野良祐がレポート。それぞれが意気込みを語り、気を吐きます。
まずは、メディアを中心に活躍し、上方漫才の発展に貢献した芸人に贈られる「話題賞」から発表です。受賞者は、『M-1グランプリ2024』にて準優勝と健闘したバッテリィズ(エース、寺家)!
エースが「よっしゃ!」と大喜びする一方で、寺家は「去年は文芸部門賞をいただいたんですけど、エースがトロフィーをポケットに入れて怒られまして(笑)。今年は入れてないので成長です」と目を細めていました。
劇場を支え続けた芸人に贈られる「劇場賞」を受賞したのはラニーノーズ(洲崎貴郁、山田健人)。プレゼンターのすゑひろがりずは、受賞を祝うだけでなく、「山田くん、ご結婚おめでとう!」と1月11日に結婚を発表したばかりの山田に祝福の言葉を贈ります。当の山田は「こんないいタイミングで受賞できて光栄です」と感激していました。
芸歴8年目以下の芸人が対象の「新人賞」では、三遊間、ジョックロック、ぐろう、ナイチンゲールダンス、金魚番長、家族チャーハンの6組が渾身のネタを披露し、その結果、新人賞に選ばれたのはジョックロック(福本ユウショウ、ゆうじろー)!
福本は「こんな栄誉ある賞をいただけて、うれしいです」と感激。ゆうじろーは、「これからどんどん面白くなるということで、景気づけに一発ギャグを披露します!」とギャグで会場を沸かせました。
コットンが新設された2つの賞を独占!
続いては、台本や表現方法などが特に優れている芸人に贈られる「文芸部門賞」。この賞にはエバース(佐々木隆史、町田和樹)、うただ(一石達也、宮本)、素敵じゃないか(柏木成彦、吉野晋右)、カベポスター(永見大吾、浜田順平)の4組が輝きました。なかでも3回目の受賞となったカベポスターは、昨年、「文芸部門名誉賞」を授与されたツートライブに触れながら、「雲の上の存在のツートライブさんを目指したいです」(永見)と意気込みを語りました。
また今回、コントにスポットを当てた2つの新しい賞も誕生。まずは、独特の世界観を持ち、優れた才能を発揮する芸人を称える「審査員特別コント作家賞」を受賞したのは、コットン・西村真二。カウス会長は、「教養と品がある」と高く評価しました。
そしてもうひとつは、コントのネタの理解力、表現力に加え、見せ方など、特に演技力に優れた芸人を讃える「審査員特別コント演技賞」というもの。受賞者はなんと、コットンのきょん! コンビ揃っての受賞に、きょんは「めちゃくちゃうれしいです」と目を輝かせました。
アインシュタイン・河井のサプライズ発表
続けて、こちらも新設された「上方漫才協会 特別功労賞」の発表へ。この賞は、舞台やメディアなどを通じて上方漫才協会の発展に大きく貢献した芸人を讃えるもので、受賞者は霜降り明星(せいや、粗品)です!
「漫才師としての箔の付き方はこれ以上ない」と感激しきりの粗品に、カウス会長は「よしもと漫才劇場の知名度を上げてくれた」と感謝しながら、「(粗品は)ちっとも言うことを聞きよれへん」と“粗品の教育担当”としてボヤいて観客は大笑いでした。
一方、相方のせいやは、上方漫才協会が発足して10年でいちばん嬉しかったことを「カウス師匠に、『中田カウスのDNAを持つ男!』と言われたこと。だから僕が次の会長です!」と胸を張ります。
するとカウス会長が「じゃあ、ここで発表しよう」と、河井ゆずるが上方漫才協会の副会長に就任したことをサプライズ発表! 河井が「えぇっ! こんなタイミングで!?」と仰天するなか、会場は大きな拍手に包まれました。
さらに、芸人の舞台衣裳にフォーカスする新部門「トータルコーディネート部門〜スタイリング ピックアップ&イメージチェンジ〜」も発表されました。「スタイリングピックアップ」では、独自の世界観を持つラニーノーズの舞台衣裳が、「イメージチェンジ」では天才ピアニスト(竹内知咲、ますみ)、豪快キャプテン(べーやん、山下ギャンブルゴリラ)、エバースの3組がピックアップされました。
大賞受賞に「これからの“激励”の意味もあると思う」
いよいよ「大賞」の発表です。ノミネートされた46組の中から、エバース、cacao、ドーナツ・ピーナツ、ナイチンゲールダンス、フースーヤ、紅しょうが、マユリカ、令和ロマンという強者揃いの上位8組から映えある大賞に選ばれたのは……ドーナツ・ピーナツ!
カウス会長は「データを見比べると(ドーナツ・ピーナツに)行き着くんです。(昨年)後半にかけて追い上げてきました。チェックしましたが、単独イベントを観に行けばお客さんは満席やし、よくウケてました。漫才というところでは、小さく大きく頑張った。本当におめでとう。全国を駆け回ってください」と称えました。
ドーナツが「10回目という記念すべき日に受賞させていただいて、重みがすごいので、賞をいただいたからこそもっと頑張りたいです」と喜びを噛み締めると、ピーナツも「これからの“激励”の意味もあると思いますので、それに恥じないように漫才を頑張ります」と感無量の表情でした。
また、特別賞は令和ロマン(髙比良くるま、松井ケムリ)が受賞。カウス会長は「この1年、(令和ロマンの)舞台をずっと見てましたが、“漫才クレイジー”だな!」と2人の漫才に向き合う熱い姿勢に太鼓判です。くるまは「2年連続でも大賞には届かなかったということで……大賞の壁は厚いなと思っています」と言いながら、うれしそうな表情にあふれていました。
渋谷に「よしもと漫才劇場」が誕生!
さらに授賞式終了後にも、スペシャルな報告が! まずひとつ目に、直営劇場「ヨシモト∞ホール」(東京都渋谷区)が3月で閉館するのに代わって、今春、新劇場「渋谷よしもと漫才劇場」がオープンすることが発表されました。
大阪・難波の「よしもと漫才劇場」、大阪・クールジャパンパークSSホール内の「森ノ宮よしもと漫才劇場」、東京・神保町の「神保町よしもと漫才劇場」に続く、4館目の「よしもと漫才劇場」です。
そして、カウス会長の芸能生活60周年も! 出演者全員がステージに集合し、カウス会長に花束が贈られました。祝福に湧く若手芸人の面々を、我が子を見るように目を細めながら見守るカウス会長は、「子だくさんです! まだまだ子作りに励みます」と満面の笑みで上方漫才協会のさらなる発展をアピールしました。
漫才は「変えてはならんところがある」
終演後、今回の上方漫才協会大賞を振り返って、カウス会長は「10回目にふさわしい授賞式になりました」と語りながら、こう続けました。
「今年は巳年ですから“脱皮”ですね。変えていかなあかんけど、変えてはならんところがある。変えてはいかんところを触ると、何をやってもうまいこといかない。漫才は基本があるようでない。ないようである。芸能の中でも、簡単そうに見えて非常に難しい。自分の体調がよくても相方の体調がよくないとか、昨日あれだけウケてたのに今日はウケないとか、『何でやろう?』とずっと思う。芸に対して疑いをかけるということをやめては、成長していけないのではないかと思います」
すると突然、カウス会長がくるまに「そう思うんですが、どうですか?」。くるまは「まったく同感です。自分がしゃべってるのかと思いました」と即座に答え、ケムリに「ウソつけ!」とツッコまれていました。
また、東京・渋谷にできる新劇場について、かねて、「47都道府県に、その街に見合う大きさの漫才劇場を作りたい」と思い描いているカウス会長は「僕が元気なうちに、と思いますね」と今後を語りました。
そして、サプライズ発表されたアインシュタイン・河井の上方漫才協会副会長就任については「やっぱり名前が“ゆずる”ですからね(笑)」と笑わせながら、「アインシュタインは初代のチャンピオン(大賞受賞者)で、MCもずっと10年間やってくれてます。それに後輩の面倒見もいいし、才能もあります。今日も皆さん、ご覧いただきましたが後輩の名前を誰一人間違わずに呼んでいました。僕なんか覚えるだけでも大変。10年間を見てきているわけですから、安心して任せられます」と太鼓判を押しました。
新人賞のジョックロック「一睡もせず成長あるのみ」
改めて大賞受賞の感想を聞かれたドーナツ・ピーナツは、それぞれ心境をこう語りました。
「ここからがすごく大事だと思います。なんばグランド花月でウケるように今年1年、頑張っていきたいと思います」(ドーナツ)
「今日もなんばグランド花月で漫才するのは、すごく緊張しました。まだNGKに飲まれそうになる自分がいるんですけど、一生懸命漫才に打ち込みたいです」(ピーナツ)
一方、特別賞を受賞した令和ロマン。ケムリが「特別賞でもめちゃめちゃうれしいです」と笑顔で語ると、カウス会長は「特特特別賞やわ!」と絶賛。一方のくるまは「トータルコーディネート部門を逃してしまったことが……」と新部門への未練をのぞかせ、ケムリから「大丈夫だよ!」とツッコまれていました。
新人賞を獲得したジョックロックも、感慨深い面持ちでこう語りました。
「記念すべき10回目に新人賞をいただきまして、『M-1グランプリ』でも決勝に行かせていただきました。ちょっと前まで劇場にすら入れていなかった自分たちがこんな賞をいただき、評価していただいてありがたいんですが、信じられないという気持ちが強くて、いままで謙遜してたんです。でも、こうした評価に恥じない活躍をできたらと思います」(福本)
「一睡もせず、成長あるのみ。寝るヒマなんてない。努力を惜しまず精進、精進。この新人賞に恥じない活躍を。そして、先ほど(カウス)師匠もおっしゃったように、変えないところも大事にしつつ、今年は成長して進化したジョックロックで挑みたいと思いました」(ゆうじろー)
カウス会長はこうした2人の決意表明に「そうや、行動力や! チャンスを掴んだら、一歩も引いたらあかん」とエールを贈りました。