芸歴5年目以内の超若手芸人のNo.1を決める賞レース『UNDER5 AWARD 2024』の決勝が、6月23日(日)に東京・ルミネtheよしもとで開催されます。「芸歴5年目」といえば、自分たちの方向性に迷ったり、ウケない理由を悶々と考え続けたりするころ。いまでこそテレビにライブにと大活躍の先輩芸人たちも、芸歴5年目当時は、同じように試行錯誤の日々を過ごしていたのではないでしょうか――。ということで、今回は『THE SECOND~漫才トーナメント~2024』王者のガクテンソク(奥田修二、よじょう)に“あのころ”を振り返ってもらいました。
できないことをやろうとして…
――ガクテンソクさんは2005年に結成。2010年でいうと『M-1グランプリ』は3回戦、『キングオブコント』では準決勝進出といった状況でした。
奥田 2010年は第1期M-1が終わり、(所属していた劇場の)baseよしもとが閉館。その翌年の2月ころには「解散しよう」という話になっていましたね。2010年は、ちょうど29歳で芸歴5年やったし、ちょっと区切り感があったんだと思います。
よじょう そうでしたね。
奥田 そこの話し合いで言ったことが(『THE SECOND』のVTRでも紹介された)「何者かになったらやめよう」という話やったんですよ。その後、漫才にグッとシフトしたら、 ようやく賞レースの決勝メンバーに選ばれるようになって……。5年目までの僕らは、お互いができもせんのに、できへんことをやろうとして、無駄に喧嘩し、無駄な時間を消費しているころでしたね。
よじょう 5年目がピークで仲悪かったんじゃないですかね。
奥田 まわりを見たら、同じ劇場に出ていたジャルジャルさん、天竺鼠さん、銀シャリさん、藤崎マーケットさん、モンスターエンジンさんたちのように、活躍している芸人がもういっぱいいて、「自分らなんやねん!」って。解散寸前のケンカをするくらい、やりたいことが絞られてないし、逆に言ったら何も考えてなかった5年間やったと思うんですよ。だから、『UNDER5』に出場している芸人たちは立派なもんですよ。
よじょう ぼくらと真逆!
――(笑)。先輩たちは順調にキャリアを重ねているのに……ってことですよね。
奥田 そうですね。当時は、出場資格が結成5年以内だったから『ABCお笑い新人グランプリ』(現:ABCお笑いグランプリ)も出られなくなっていますからね。2011年のABCも、同期だけどコンビ歴で言うと下のミルクボーイ、後輩のダブルアートらが出た決勝の予選にも参加できていない。それをテレビで見るから、グーッと追い込まれていくんですよ。
――それはツラいですね。
奥田 漫才で頑張っているつもりだけど、ウーマンラッシュアワーさんが(島田)紳助師匠に褒められてごぼう抜きするとかね。「じゃあ、俺らの漫才なんやねん。運もないんかい」みたいな。若いのもあって、エネルギーがいろんな方向に飛び散ってましたね。
ひとりで泣いた大晦日の夜
――芸人を続けながら常に「焦り」と戦っていたんですね。
奥田 当時は、意味なく焦っていたんですよ。「藤崎さんはディズニーシーでロケしているのに俺たちは何なんだ」とか、「モンスターエンジンさんは『あらびき団』でハネ出しているのに俺たちは何なんだ」とか……。各コンビのできるところが全部うらやましいんです。テレビに出始めている先輩が同じ劇場にいるからか、自分らも全部できると思ってもうとるんですよ。それで結局、「できないのは相方のせいだ」ってなるんですよね。
よじょう みんなができていることを自分もできると思っていましたし、できもせんくせに「全部できなアカン」みたいなことも思っていました。
奥田 大晦日の夜なんて泣きましたもんね。銀シャリの橋本(直)さん、スーパーマラドーナの田中(一彦)さんたちと住んでいたんですけど、みんな生放送のネタ番組か、カウントダウンライブに行っていて、大晦日に僕ひとりやったんですよ。「誰かいるかも」と思って、そばを多めに買ったのに誰もおらんから、泣きながら年越しそばを食べました。
よじょう 焦りはありますよね。僕はこいつと違って実家やったんで、ひとりで涙するとかはなかったですけど(笑)、モチベーションは底辺中の底辺やったと思います。
奥田 当時、コンビで会うのは週に2回のライブくらい。仲が悪いので、ストックしてあるネタばかりしていましたね。
よじょう ネタ合わせもしてなかったんじゃないですかね。もう直前で「あれで」みたいな。
奥田 だから、『UNDER5』に出る人は、当時の僕らと逆のモチベーションになっていてほしいですよね。
よじょう 確かにな。
一気に風向きが変わった『ytv漫才新人賞決定戦』
――当時、賞レースについてはどんな印象を持っていましたか?
奥田 2、3年目のときって、ウケるのに予選で落ちるイメージがあったんですよ。だから、予選のときにはすでにふてくされてましたね。いま思ったら、一生懸命やってなかっただけなんですけどね。一生懸命やって落ちたら大否定なんで、落ちたときは「まあ、手を抜いたしな」と思っていました。
よじょう 当時は決勝に出たら、ちょっとは認められるんやろうなぐらいの感覚でしたね。でも、ぜんぜん行けなかったんで、ずっと否定されてる感じでした。
――ただ、劇場ではウケているんですよね?
奥田 そうなんですよ。劇場のバトルライブで2軍に落ちることもないし、上位を取ったりしてるんですけど、無理なんですよ。
――ジレンマですね……。
奥田 結局、日々の努力というか。モチベーションが悪い奴には運も回ってこないんだろうなと思います。
――2011年以降は、『THE MANZAI』決勝のほか、関西の賞レースでも決勝に進出します。一度、決勝に行くと気持ちは違うものなんですか?
奥田 ぜんぜん違いますね。2011年の夏に第1回の『ytv漫才新人賞決定戦』の予選が始まったんですよ。もうやる気にはなっていたので、がっつりネタ合わせはしているんですけど、「どうせ無理やろ」とか話してたよな。
よじょう そうそう。“無理やろ”と思ってボケーっとしてましたね。
奥田 そしたら予選を1位で通過したんですよ。(オール)巨人師匠にめっちゃ褒められて。「しゃべくりがうまい。どこにおったんや」みたいな。
よじょう ほんま、そこから一気に風向きが変わりましたね。
奥田 そのテンションで『第9回 MBS新世代漫才アワード』の予選にいったら決勝大会に出られて「通んねや!」って。
よじょう そこからポンポンポンとな。
奥田 結局、成功体験が自信にもなりますしね。優勝こそまだ2年くらい先になりますけど、「この漫才の方向性は間違ってない」と思えたのがデカいですね。
よじょう 決勝に行くのと行かんのとでは、やっぱりモチベーションがぜんぜん違いますから。
奥田 あと今回の『THE SECOND』は一発で取れましたけど、僕ら2015年ぐらいまでほとんどの賞レースの予選を通過するから、すごい速度でネタがなくなっていったんです。あの苦労があったので、「賞レースに出たときは一発で決めなアカン」と思ってましたね。
よじょう 全部の賞レースに言えることなんですけど、決勝に出たら絶対に一発で決めたほうがいいです。「何年連続」の人、やっぱりきつそうですもん。だからこそ、M-1の決勝に9年連続出場した笑い飯さんはイカついですけどね(笑)。
若手は「失敗して当たり前」
――当時はなかった『UNDER5』。この大会についてはどんな印象ですか?
奥田 決勝に出られて、優勝できて、最強にラッキーやとは思うんですけど、僕らみたいな芸歴やからこそ……というか、もう僕らサイドはこれを言うしかないんですけど、「まだまだ先は長いぞ」っていうね。
よじょう まあまあね(笑)。
奥田 今後、『THE SECOND』みたいに「あなたのファーストチャンスは?」と聞かれて「『UNDER5』で優勝したんですけどね」と話す人がいるかもしれませんから(笑)。
よじょう それこそ僕らの『THE MANZAI 2011』じゃないですけど、決勝行くだけでターニングポイントになる組、めっちゃいると思います。
――後輩芸人は先輩の話を聞きたいと思います。いまの若手にアドバイスを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか?
奥田 僕は、むかしからセンスは全部、後輩のもんやと思っているんですよ。「面白い」はお客さんが決めることやから、昨日までお客さんやった人のほうが、いまの笑いには近い。プロになると、お客さんの感覚からどんどん離れて、技術勝負になってくるんですよね。みなさんもどんどん後輩ができると思うんですけど、もうセンスで後輩のことは気にしないことですね。芸人になってから伸ばすのは、技術のみなんで。
先輩の技術は僕らも受け継いできたやつやし、バチバチ盗んでいったほうがいい。たとえば、前説とかで劇場に行って、COWCOWさんの漫才を見られる機会があったら、あの方々が20年以上かけて培った技術を勉強したほうがいいし、盗まれたら困るという先輩は、吉本には1人もいないと思います。「どうぞ、やってちょうだい」って方がほとんどだと思うんですよ。だから、時短で技術を進化させていってください、と思いますね。
よじょう 失敗するのは当たり前やし、ほとんどの組がうまくいかないんで、そこでヘコまないことですね。僕らも2010年ころ、めっちゃ仲悪くなったときに、いろいろできると思っていたけど、結局、できることなんて限られていたんで。気軽に思っていたほうが、無駄な喧嘩もなくなると思います。
奥田 「しんどい」がデフォルトやからこそ、たまにある「楽しい」がめっちゃ楽しいですからね。いちいちヘコんでるヒマないよって伝えたいです。
取材・文・写真:浜瀬将樹
大会概要
「UNDER 5 AWARD2024」決勝戦
日程:2024年6月23日(日)19:30~21:00(予定)
会場:ルミネtheよしもと
(新宿区新宿3-38-2 ルミネ新宿店2 7階)
MC:ニューヨーク
審査員:
石田明(NON STYLE)
岩崎う大(かもめんたる)
長田庄平(チョコレートプラネット)
佐久間一行
哲夫(笑い飯)
野田クリスタル(マヂカルラブリー)
塙宣之(ナイツ)
※五十音順
特別出演:金魚番長(UNDER5AWARD2023王者)、OWV(大会スペシャルサポーター)
※大会テーマソング「Luminous」のスペシャルパフォーマンス映像も上映します。
決勝戦進出者:
家族チャーハン(吉本興業)
キャプテンバイソン(プロダクション人力舎)
清川雄司(吉本興業)
ぐろう(吉本興業)
例えば炎(吉本興業)
ツンツクツン万博(グレープカンパニー)
伝書鳩(吉本興業)
マーティー(吉本興業)
ライムギ(吉本興業)
※五十音順
<チケット情報>
【会場チケット】
前売り・当日券
一般発売:6月12日(水)10:00~
チケット販売:FANYチケット
【配信チケット】
無料生配信
※終了後、48時間の見逃し配信あり
チケット販売:FANY Online Ticket
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