4月15日(土)、16日(日)の2日間にわたって開催された「島ぜんぶでお~きな祭 第15回沖縄国際映画祭」。15 日(土)、那覇市の桜坂劇場ホールCで上映された映画『HAPPY SANDWICH~幸せのサンドウィッチ~』は、沖縄本島北部「やんばる」の中心地の名護で飲食店を営む満名匠吾(まんな・しょうご)が神様に捧げるにふさわしいサンドウィッチへのヒントを探し求めながら、生産者や料理人たちの「食」への想いを聞いていくというストーリーです。本作の主人公である満名と岸本司監督に話を聞きました。
―― フィクションのようでドキュメンタリーのような不思議な映画でした。
満名 まず監督と、物語としてつくろうというのがあったんですけど、それが新型コロナ禍でできなくなって、フィクションとインタビューを混ぜたハイブリッドみたいな新しいタイプのドキュメンタリーを撮ろうってなったんです。
岸本 変にセリフを考えず、一人一人が十分魅力的だったから、テーマを「サンドウィッチ」に決めて、話を自由に聞いていくだけで膨らませていきました。琉球という歴史からは全然かけ離れた全く関係のないものから沖縄の食文化を紹介すると面白いかなと思ったんです。
――登場人物がみなさんすごく個性的でした。
岸本 やんばるのちょっと変わり者の満名さんの家から始まるの、よかったでしょう。あの家は、ガスを引いていなくて、薪で生活しているんです。山羊もいるし(笑)。その生活がすごい贅沢だから、あの場所から映画をスタートさせようと思ったんです。満名さんが主役になってからは、満名さんの物作りをしている知り合いの方をたくさん紹介していただけて。いろんな方が繋がっていきましたね。
満名 やんばるも、やんばるじゃなくても、なんか面白い人たちがたくさん出てくれましたね。僕はちょっとだけお芝居のシーンがあって、そのほかは全部ただ普通に話をしていました。うちなーぐちで話をしているときはいいんですけど、やっぱりお芝居のシーンになると緊張しましたね。
みんなが地球を大切にすることを分かっている
――この映画は意図してSDGsや日本の未来を考えたのではなく、今のやんばるの、食と暮らしを伝えようとしたら結果的につながった(SDGsや日本の未来)
岸本 今回出演していただいた方の多くが満名さんの知人でもあり、共通していたのが、すごく芯のある考え方を持っている人たちだったんです。それはやっぱり、自然を意識している人達だから考え方もすごく共通しているんですよね。話している時間が長い分、編集はとても時間がかかったんですけど、その代わりすごく流れがあって、結局、満名さんと同じ気持ちを持った人が多いということ。みんなが地球を大切にするってことを分かってくれてるんだな、って思います。
満名 誰かの家に遊びに行ったら、フランクな話からだんだん真剣な話をすることが多いんです。今回も、カメラを意識することはなく、そんないつもの日常を本当に切り取っていただいた感じでしたね。ウミンチュの仲村さんみたいに、減り続ける漁獲量を危惧しながら「この子は産卵しそうだからリリースしましょうね」とか問いかけていたでしょう。彼の周りにはその考え方に反対する人もいるんです。それでも、ちゃんとしっかり考えてやっているから、彼らに何か押し付けがましさとかないんですよね。
――ヴィーガニストの齋田実美さんとの対話は印象的でした。
満名 やっぱり対話が必要です。お互いが理解し合おうとすることで、対話によって、お互いが何を大切にしているか、がわかる。彼女の話を聞くことで、動物の命をいただくってことが大きなの食文化の中で、全ての命をいただく責任の話をしていて。沖縄の食文化は、例えば豚だったらチラガーって言って顔の先から、豚足まで、全部ね、豚の血や、内臓を使う。だから無駄なく命をいただくのは、無駄なく消費するってこと。その子の命のため全部ちゃんと食べましょうってことなんですよね。
岸本 あの対話にはシナリオも当然入ってないんですよ。満名さんのいう通り、撮ってるときにすごく思ったのが、食べるための祈りって大切だなと。だからこの作品でも祈るシーンがとても印象的になっていると思います。
――もう出てくるサンドウィッチが全部、美味しそうでした。この映画がどんなふうに広がってほしいと思っていますか?
岸本 そうですよね、僕もサンドウィッチがでてくるたびに、お腹すくって言ってたんです。あれは全部、皆さんにオリジナルで作っていただいたサンドウィッチなんです。
満名 本当に全部美味しそうだった。僕が思っているのは、自分が作ったものは絶対美味しいということなんですよ。例えば、ズッキーニだけを挟んだサンドウィッチが出てくるけれど、そのズッキーニだって自分たちが作ったものだから美味しいんですよね。
岸本 サンドウィッチを通して、沖縄の「食」を多くの人に知ってもらいたいし、自然のことも考えてほしい。この映画は沖縄で上映がスタートしますが、日本のいろんなところで上映して、みんなで食や自然、日本の未来を考える、そんな広がり方をしてほしいと思っていますね。