4月15日(土)、16日(日)の2日間にわたって開催された「島ぜんぶでお~きな祭 第15回沖縄国際映画祭」。16日(日)、那覇市のテンブスホールで上映された映画『遠いところ』は、沖縄県のコザで幼い息子を抱えて暮らす17歳の女性が、社会の過酷な現実に直面する姿を描くストーリー。17歳の母として子どもを育てる主人公・アオイ役を体当たりで熱演した花瀬琴音とその親友・海音を演じた石田夢実に話を聞きました。
――撮影はどこで行われたのでしょうか?
花瀬 舞台になっている沖縄市のコザで行われました。私と石田さん、マサヤ役の佐久間祥朗さんの3人は役作りのため、1カ月間ぐらいコザに滞在してから撮影をしました。
――役作りで1カ月間滞在はすごいですね。
花瀬 背負っているものが本当に大きい作品だったので、役作りの時間は私たち俳優にとってすごく貴重な時間でした。キャバクラの多い松山にも行って、キャバクラで働いてる子たちに話を聞いたりして勉強しました。方言は毎日ラジオを聞いたり、近くのおばーたちとお話をしたりして、少しずつ勉強していきました。
石田 私自身は今までずっとモデルしかしてこなかったので、俳優として演技をするのが本当に初めてだったんです。だから花瀬さんたちに本当に助けてもらいました。
――実際に取材して感じたことってありましたか。
花瀬 台本を見せたときに、私の友達にこういう子がいるとか、私の元彼もそうだったとか、すごく共感してくれた人がいて、逆に私がすごくびっくりしました。そのぐらいDVや貧困という問題が彼女たちの身近にあると感じましたし、もっと言えば、これは沖縄だけじゃない問題だと思っています。沖縄だけじゃなくて、本当はすぐ近くで起きていることなんじゃないかと感じました。このような問題は彼女が悪いわけではないし、彼女の環境でそうせざるを得ないっていうことがとても胸が痛かったです。目の前にいる子どもを守るために必死にやっている結果が、こうなったのがすごく悲しかったです。
石田 私は殴られたアオイを見て笑うシーンがあるんですが、私だったら「大丈夫?」って聞くと思うんです。でも私の友達に彼女と同じような子がいて、一番苦しいときに、とりあえず笑わせてくれる子がいる。その子のことを思い出して演じていました。それから、あれだけの暴力を受けても2人が笑っているっていうことは、それだけ2人のまわりに暴力が当たり前のようにあるんだなって思いましたね。
「実際に苦しんでいる方たちに比べれば…」
――女性として精神的に辛いシーンがたくさんあったと思いますが、演じていていかがでしたか?
花瀬 確かに大変なシーンはたくさんありましたが、実際にDVを受けた経験のある方たちに協力もしてもらっていたので、実際に苦しんでいる方たちに比べれば、芝居で感じる苦しみなんて比べようがないなと思っていました。作中では、自分がとにかくアオイとして存在して、彼女の痛みをそのまま痛みとして受け入れるようにしていました。
石田 私はキャバクラのシーンで実際に働いてくれている方たちが、わたしたちに演技指導をしてくれていたんですが、お酒飲んで、テーブルの上のこととか全部気を使って、本当にすごいなって思ったんです。尊敬しましたし。
世界に知ってもらいたい
――この作品を通してどんなことを感じましたか?
花瀬 監督はすごく厳しかったので、沖縄にひとり放り出されてやりきったことで、今後どういう仕事をさせていただけるかわからないですけど、この現場をやりきったからこそ、どんな現場が待ち受けていてもくじけることはそうそうないと思います。それぐらい一生懸命必死に演技をしました。大切なことは全部学ばせてもらったと思っています。この作品で主演デビューできたことも非常に幸せだったなと思います。
石田 石田夢実として、すごく成長させてもらった作品だと思っています。今後、この作品をたくさんの人に見てもらって、ひとりでも多く共感してもらえたらなと思っています。沖縄をきっかけにスタートしますが、全国のみならず、世界にこの日本の状況を知ってもらえたらなと思いました。