京都市内で10月13日(金)~10月15日(日)の3日間にわたって開催された「京都国際映画祭2023」。その熱も冷めやらぬ10月24日(火)に京都・よしもと祇園花月で、映画祭の実行委員長も務めた中村伊知哉・iU(情報経営イノベーション専門大学)学長による「後夜祭」イベントが開かれました。学長の“推し漫才師”を集めたというこのイベントは、なんと学生たちの授業の一環でもあるとのこと。その“授業”の様子を、吉本新喜劇の座員であり、芸人ライターとして活動する吉岡友見がレポートします!
『京都国際映画祭 後夜祭~きょうの寄席~iU学長くん推しVol.2』と題されたこのイベントは、昨年に続いて2回目の開催。中村学長が、10~20代のお笑いにあまり詳しくない人たちに向けて自身の“推し漫才師”を集結させて寄席をする、という狙いの企画です。
学長が胸を張る「夢のラインナップ」
MCは今年5月にお笑いコンビ・コマンダンテを解散し、7月に改名したピン芸人・石井ブレンドが務めます。コーヒー好きにちなんで付けられたという、この芸名。そして好きが高じて「(10月)27日にカフェをオープンすることになりました!」と発表すると、客席から拍手が起こります。
そんなあたたかい空気のなか、今回のイベントの中心人物となる中村学長が登場します。シルクハットに羽織袴姿の中村学長に石井は「不審者ですか?」と問いかけますが、実はすごい経歴の持ち主。
東京ではiUの学長、そして京都大学の特任教授も務めています。この日のイベントも授業の一環ということで、客席、そしてオンラインで生徒が受講しているというのです。京都国際映画祭の実行委員長も務めた中村学長が、イベントへの意気込みをこう語ります。
「映画祭には“映画もアートもその他もぜんぶ”というサブタイトルが付いていますが、“その他”に当たる“お笑い”が少ないと思い、この企画を立ち上げました。そして、学生にお笑いを学んでもらいたい」
「デジタルな現代に学ぶべきはコミュニケーション、その最高峰は漫才である」と説く中村学長が今回、セレクトした芸人はDr.ハインリッヒ(幸、彩)、もりやすバンバンビガロ、デルマパンゲ(迫田篤、広木英介)、ダブルヒガシ(大東翔生、東良介)、ハイツ友の会(清水香奈芽、西野)の5組。中村学長は「夢のラインナップ!」と胸を張ります。
爆笑ネタ5連発で大盛り上がり!
さっそく5組続けてネタの披露です。
トップに登場したのはハイツ友の会。酒とタバコをたしなむことにマウントを取ってくる人に対して、淡々と毒付く2人。斜めだけど共感してしまうネタに会場が沸きます。
そしてダブルヒガシは登場するなり、客席で見守る中村学長にすかさず、「学長、ありがとうございます」と挨拶。「彼女がほしい」という話題からめちゃくちゃになっていくデートのさまをテンポのいい漫才で熱演し、爆笑を巻き起こします。
続いて登場したのはデルマパンゲ。「顔と名前だけでも覚えて帰ってください」の一言から思いもよらない方向に。とんでもない展開をする漫才に客席から笑いが止まりません。
そしてここで今回、唯一のパフォーマー、もりやすバンバンビガロが登場。ジャグリングやマジックなどアッと驚く芸に拍手、軽快なトークで観客は爆笑。漫才は相方とのコミュニケーションですが、もりやすは客席とのコミュニケーションがばっちりです。
今回の寄席でトリを務めるのはDr.ハインリッヒ。「燃えている焼き肉屋」という独特の世界観が炸裂する漫才に観客は巻き込まれて終始、笑いが起こっていました。
「僕」と「俺」をめぐってトーク
爆笑ネタが終了すると、舞台上に全員集合してトークコーナーに突入! 「言葉の本質を語ろう!」というテーマに沿ってトークが繰り広げられます。
漫才で方言を使う福岡出身のデルマパンゲ。迫田は「気持ちが乗っていれば、言葉が違っても伝わる」と熱弁します。
Dr.ハインリッヒは子どものころから一人称が「わたくし」になったと言い、そこから男性陣の「僕」と「俺」の使い分けの話に。目上の人には「僕」、友だちには「俺」といった意見が出るなか、もりやすが「妹にだけ“俺”やった」と謎のこだわりをみせます。
そんなもりやすが観客に向ける言葉について、迫田が「一文字一文字に心がつまっている」と力説すると、同じピン芸人の石井もそれに共感。「コンビ時代は客席を見ることはなかったけど、ピンになって客席にめちゃくちゃ話しかけてるし、客席を見るようになった」とコンビとピンの観客への向かい方の違いを、経験を交えて語りました。
大学教授はみんなスベってる!?
話を聞いていた中村学長が、自身の大学の講義を「僕もピンです」と芸人にたとえると、「大学の教授はみんなスベってるよ」と爆弾発言!? 芸人たちの総ツッコミでトークコーナーは終了しました。
最後に、今回のイベントの総括を求められた中村学長が「漫才を見て、僕もこんな授業ができたらいいなと思いました」と無邪気なコメントをすると、デルマパンゲ・広木が「ほんまにこの人、エラいんか!?」とツッコみ、大爆笑のなかでイベントは幕を閉じました。
京都国際映画祭の“後夜祭”にふさわしいお祭りイベント。来年も開催されることを願います。
そして、こんな楽しい授業、学生さんが羨ましい限りです!