10月13日(金)~10月15日(日)の3日間、よしもと祇園花月をはじめとした京都市内の各会場にて「京都国際映画祭2023」が開催されています。今年の京都国際映画祭では、当映画祭の名誉実行委員長を長年務められた中島貞夫監督の追悼上映をはじめ、映画上映や舞台挨拶、アート作品の展示やオンライン企画なども同時に展開し、映画もアートもその他も全部お楽しみいただけます。
10月14日(土)おもちゃ映画ミュージアムにて、世界初の女性映画監督、アリス・ギイの生誕150年を記念した作品上映とアリス・ギイ研究者による講演が行われました。
アリス・ギイ(1873~1968年)は、1896年に世界初のフィクション映画『キャベツ畑の妖精』を作った世界初の女性映画監督。生涯で700~1000本も作品を作ったのにもかかわらず、同時代のリュミエール兄弟やトマス・エジソン、ジョルジュ・メリエスに比べてほとんど知られていません。今年はアリス・ギイ生誕150年の節目。京都国際映画祭2023では、おもちゃ映画ミュージアムに寄贈された貴重なアリスの名作とともにその知られざる魅力に迫ります。
弁士の熱演とピアノ演奏で蘇る名作
今回は、アリスが自身のキャリアのピークといわれている1912~1913年にアメリカで作られた5作品を上映。坂本頼光氏の活弁と天宮遥氏のピアノ演奏で楽しめる、アリス・ギイ作品では、世界初!?の活弁に、たくさんの映画ファンがかけつけました。アリス・ギイ研究の第一人者で映画研究家の吉田はるみ氏は、「アリスはわたしにとって、大変興味深く、魅力的な女性です。魅力を語るには、残っている作品が少なすぎるのですが…」とアリス愛を語り、活弁を務める坂本氏は「彼女の映画には、女性らしい視点もありますが、喜劇のダイナミズムは男顔負けです」と紹介。「バスター・キートンやハロルド・ロイド以前にこんなにセンスのある女性監督がいたとは知りませんでした」と天宮氏も期待を寄せます。
早速、「仕込まれたハーモニー」「肘掛け椅子の少女」「結婚の制限速度」「ヘンダーソン巡査」「分割された家」の5作品を坂本氏の活弁と天宮氏の伴奏とともに上映。天宮氏は、楽しい場面では笑顔で演奏するなど、心から楽しみながら変幻自在な音色を響かせました。中には、バスター・キートンが影響を受けたと思われるストーリーもあり、アリス・ギイの偉大さを感じることができます。
坂本氏さんのいきいきとしたセリフまわしに、会場からはときおり笑い声が。作品は、1秒16コマでデジタル化されていて、坂本氏曰く、「ゆったりとしたテンポの映画は、間が持ちにくいので弁士泣かせ」だとか。翻訳と異なる独自の説明セリフなどを意識して観ると面白さが増します。1作品約15分の作品が5作品連続で熱演され、最後の作品では見事に3人のキャラクターを演じ分けた坂本氏に大きな拍手が送られました。
93年の波乱万丈な映画人生
上映後は、書籍『アリスのいた映画史』を執筆した映画研究家の吉田はるみ氏による講演会が行われました。アリスの作品を活弁と演奏を合わせてスクリーンで見るのは、初めてだったという吉田氏。今回の上映について、「作品は映像だけで理解できるようにはつくられていますが、時代も文化も違うので、活弁をいれて鑑賞することに可能性を感じました。細かいところまでしっかりと解釈されていて感動しました」と絶賛。 1873年生まれで、当時では珍しく94 歳まで長生きしたというアリス・ギイ。映画監督を志すまでの道のり、フランス映画界全盛期の頃の話にはじまり、結婚、子育て、映画会社の設立、離婚…30分では到底語り切れない波乱万丈な人生は、それ自体が1本の作品になりそうなくらい濃厚なもの。集まったお客さんは興味深く聴き入っていました。夫との不仲や今の言葉で言えばジェンダー、階級、人種の問題への意識など実話や思想が作品の中に盛り込まれているといった興味深い話しも。最後に「アリス・ギイというすばらしい映画監督のことをもっと知ってもらえたら。これからも見守ってください」と締めくくりました。
「京都国際映画祭」は2014年より「京都映画祭」から引き継いだ伝統と志を重んじ、「映画もアートもその他もぜんぶ」をテーマに「新しいモノ・コト」にも積極的に取り組んできました。第7回からは柔軟に形を変えてオンラインとリアルの良さを併せもつ、ハイブリッドの映画祭として開催しています。
『京都国際映画祭2023~映画もアートもその他もぜんぶ~』
開催期間:10月13日(金)~15日(日)
場所:よしもと祇園花月、京都市京セラ美術館、京都国際マンガミュージアム、おもちゃ映画ミュージアム、ほか
『京都国際映画祭2023~映画もアートもその他もぜんぶ~』公式HPはこちら