“日本一のコント師”を決める大会『キングオブコント2023』の準決勝が9月20日（水）、21日（木）の2日にわたって開催されます。実は、お笑いファンがもっとも胸を熱くするのが準決勝――というのは、ご存じでしょうか！？ 今回は特別企画として、2016年王者のライス（関町知弘、田所仁）と2021年王者の空気階段（鈴木もぐら、水川かたまり）に、大会の思い出や、見どころなどを語ってもらいました。【前編】
今年も決勝10組の座をかけて、35組のセミファイナリストが、命を削ってつくりあげたコントを披露します！ 決勝への切符を手にするのは、どのコント師なのか？ 準決勝の模様は9月22日（金）以降、オンラインでも配信されます（有料）。
キングオブコントで変わった芸人人生
――キングオブコント（KOC）は2008年からスタートしました。ライスと空気階段は、それぞれ世代も優勝した年も違いますが、大会の雰囲気なども違っていたんでしょうか？
関町 いまは準決勝でネタを2本しますけど、僕らのときは1本でよかったんですよ。たまに後輩から「ライスさんの時代といまとは違うんで、チャンピオン面するのやめてもらえますか？」って言われますから。
――（笑）。ライスの2人は、KOCが始まる前に芸歴をスタートさせています。KOCが始まったことで、ネタの作り方などが変わったということはありますか？
田所 僕らが（芸歴）3、4年目ぐらいでKOCが始まって、最初は何も変えずに出ていたので、予選で落ちまくっていたんですよ。何年か経つと「後半、盛り上がるように作ったほうがいい」とか「オチでめっちゃウケたほうがいい」とか、大会用の作り方に変わったような気がします。
――ライスより8年後輩の空気階段は結成当時からKOCがありました。やはり、当初から大会を目指して活動していたんですか？
かたまり そうですね。NSC（吉本総合芸能学院）のときから当然、“出るもの”だと思っていました。
もぐら 最初から大会があったんで、劇場に出てもKOCに何のネタを持っていくのか、みたいなことは考えていましたね。
田所 芸人やる前からテレビでKOCを見ていたってこと？
もぐら そうですね。僕らがNSCに入る前は、第4回（2011年）のロバートさんが優勝していましたね。
もぐらに彼女ができて覚醒？
――先ほどの話では、ライスのおふたりは最初から成績が良かったわけではなかったと言ってましたね。
田所 最初に出たKOCが1回戦落ちで、そこからほぼ2回戦までしかいけない……というのが4、5年続きましたね。
関町 僕らが準決勝に進んだのは、優勝した年を入れて3回ぐらいしかないです。優勝した年は1回戦（準決勝・決勝進出者はシード権がある）から出てましたし。
――コンビとして潮目が変わったきっかけはありますか？
田所 優勝する2年くらい前に「よしもと幕張イオンモール劇場」（千葉市）ができて、その劇場に出ているときに「わかりやすいネタのほうがウケやすいんだな」って思ったんですよ。あの劇場は、ファミリーの方とか、買い物に来たお客さんもいるので、ちょっと難しいネタをやると、めちゃくちゃスベる。だから、幕張（の客層）に向けたネタ作りをしてみたら、自ずとどこでもウケるネタが作れるようになった気がします。
僕ら決勝の2本目でやった喫茶店のネタは、幕張の劇場でもよくやっていたコントで、それが決勝でもそのままウケた……みたいな感覚なんです。（東京・渋谷の）「ヨシモト∞ホール」しか出ていなかったころは、お笑いファンの方に向けて作っていたんで、ちょっとずつネタの雰囲気も変わっていった感じがします。
関町 あと、前の年まではKOC対策ライブとかもやっていたんですけど、 僕らは、そういうのをすると「やったからには優勝しなきゃ」とプレッシャーに感じちゃって、結果を出せないタイプだと気づいて……。優勝した年は、そういった対策ライブをやらなかったのも大きいかもしれないです。
――空気階段のおふたりは以前、「優勝前にいろんな劇場に出て感覚をつかんだ」と言っていたそうですね。
かたまり そうですね。それこそ優勝前のライスさんが、決勝のネタを幕張でやりまくって「めっちゃウケてた」という話が出回っていたんで、僕らも幕張でネタを試していました。
もぐら あとは「沼津ラクーンよしもと劇場」（静岡県沼津市）ですね。
田所 あ～、わかる。沼津でウケたら、どこでもウケるもんな～。
もぐら やっぱり、どっちにもウケるネタじゃないと（上に上がるのは）難しい感じはしますね。
――空気階段の2人は、予選を戦うなかで潮目が変わったと感じたのはいつですか？
かたまり 2018年に2回目の準決勝に行ったんですけど、そのとき、けっこう手応えがあったので、自分から決勝進出の雰囲気をすごく出していたんですよ。
――（笑）
かたまり 結局、落ちるんですけど、惜しいところで落ちたら、なんとなくライブのお客さんから「次は行ってほしい」みたいな追い風があって。その雰囲気を感じたときに、「次は決勝に行けそうだな」というのは少し思いました。
――ネタについては、なにか変わりましたか？
かたまり 4年目（2015年）で初めて準決勝にポンと行けたんですけど、キャラクターを掘り下げたコントをしたらすごくしっくりきて、「賞レースには、この感じが合っているのかな」とは思いました。
もぐら 準決勝以上に行けるときは、キャラクターの要素があるときで、落ちるときは、キャラクターの要素があまりなかったとき。そのあたりはハッキリしていましたね。
かたまり あと、もぐらに彼女ができたのは大きいと思います。
もぐら めちゃくちゃ変わりましたね。それまでは「得体が知れねえな」みたいな感じでまったくウケなかったのが、説得力が出てきたのか、「こいつ、彼女いるんだよな」って人間として見てもらえるようになったというか、お客さんの反応が変わりましたね。
「ライス優勝」を当てたコントの事情通とは？
――ライスが優勝する直前の印象について、空気階段のおふたりはどう感じていましたか？
もぐら たしか1回戦か2回戦の時点で、僕ら若手のところまで「ライスさんが優勝するかもしれない」という情報が届いてました。
田所 ぜったいウソだろ（笑）。
もぐら その人は「とんでもないネタを隠しているから、最低でも決勝には行く」と言ってましたよ。
関町 その人は誰なんだよ！
もぐら コント通の方がいたんですよ（笑）。当時、どんなネタなのか聞いたら「喫茶店で……」と設定を教えてもらって。口で聞いただけで面白かったので、「たしかにライスさんは、とんでもないものを隠しているんだな」と思っていました。
田所 隠してないんだよ。寄席でめちゃくちゃやってたから（笑）。
かたまり 僕もそれは聞いてましたね。当時、「ライスさんとしずるさんがスゴいらしい」とウワサになっていました。
――反対にライスのおふたりは、決勝に行ったときの空気階段について、どう見ていましたか？
田所 もちろん存在は知っていましたけど、僕がちゃんとネタを見たのは、「先輩がネタ見る」みたいなライブだった気がします。そのときは、強烈なキャラのコントをしていたんですけど、そこからウワサを聞いたり、ライブで一緒になったりして、「いろんなネタがあるんだな～」と知った感じですね。
関町 （空気階段が2019年に初めて決勝に出る前から）ウワサは聞いてました。それまで、コントをやる後輩っていなかったんですよ。
田所 めちゃくちゃいただろ！
関町 ジャングルポケットとかシソンヌとかいるし、もちろん面白いコント師はたくさんいましたけど、「東京吉本の若手コント師が、（当時は）世に出られていない」みたいな話になっていて。そのなかで空気階段は「単独が面白い」とウワサになっていました。そんな芸人、僕らの下にあまりいなかったんで。
田所 だから、そんなことないんだって（笑）。
大学生からベテランまで残った準決勝メンバー
――優勝してから変わったことがあれば教えてください。コントに変化はありましたか？
もぐら 劇場でのライブは、賞レースにめがけてやっていた部分があるんですけど、単独ライブは賞レース関係なしにやっていたし、一生やっていくつもりだったんで、そういう面に関しては、変わりないですね。
田所 優勝してからは、KOC関係なしに自由に作っていたんですけど、ここ2、3年は、5分ネタで、ちゃんと後半盛り上がるようなネタを作るようになったんですよ。理由としては、賞レースに出てる若手から「ちょっとライスさん！ このネタ、KOCでも使えるコントじゃないですか」って言われたいから。
――（笑）
田所 もうKOCに出ることはないんですけど、「もう1回、出られるんじゃないですか？」「出ねーよ、バカ！」みたいな会話をしたいがために作っています。
――そのほか、仕事面やプライベートなどで変わったことはありますか？
かたまり 思いもよらない人が見てくれていたんだな、と思うのは、元Jリーガーの方とサッカーをする仕事があったとき、いま日本代表のコーチをやっている名波浩さんから、「かたまり！ KOCを思い出せ！」と言っていただいて……。“あの元日本代表の名波が見てたんだ！”と驚きました。
関町 すげえ（笑）。僕らは、KOC優勝した生放送が、その年の最初のテレビ出演だったので、ガラッと環境が変わりました。それまで関東の劇場しか出られなかったけど、地方の劇場とかイベントに呼んでもらえるようになったし、あとはおカネのいいウェブCMとかね……。
もぐら CMでいいじゃないですか。「ウェブCM」って、なんかいイヤらしいですよ（笑）。
関町 なんか、ウェブCMってチャンピオンっぽいじゃん。
かたまり あと、グリーン車になりました。
関町 僕らが優勝して7年越しになったやつね。
かたまり （笑）。ライスさんがグリーン車になっていないのを聞いていましたし「優勝したら真っ先にマネージャーに言え！」というのを頭に叩き込まれていたんで、すぐに「グリーン車にしてください！」とお願いしました。
関町 KOCのスタジオを出たところで、それを言ったんでしょ？ 早いよ！ まずは「おめでとう」って言いたいのよ。
――（笑）。そんな2組も通ったKOC準決勝が今年も開催されます。今年、注目しているポイントを教えてください。
かたまり やっぱり連合稽古（あかつ、キンボシ、めっちゃ、ゆんぼだんぷ・カシューナッツによるユニット）さんは気になりますよね。どの順番に入ってくるのか。
関町 このあとやるのは嫌だろうな～（笑）。
もぐら MC前に入っていただくのが丸く収まるかもしれないですね。
田所 僕らと近しい人も出ていて、同期のサルゴリラとは「メトロンズ」という演劇ユニットを一緒にやっているので、2人が優勝したら、たぶんメトロンズのお客さんが増える。で、ファイヤーサンダーとは毎月、ツーマンライブをしているから、2人が優勝したらそっちのお客さんが増える。いま両面（リャンメン）待ちの状態なんですよ。
――（笑）
関町 まだ大学生の伝書鳩とかがいるなか、かたつむり、サルゴリラ、ザ・ギースさんとか、若手に交じってベテラン組が残っているのは見ていて楽しいですね。
田所 今回は、ザ・ギースさんが最年長。去年はサルゴリラが最年長でしたから。
関町 サルゴリラの2人が「今回はホッとする」と言ってました（笑）。
取材・文・写真：浜瀬将樹
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『キングオブコント2023』準決勝・配信情報
【準決勝1日目】
9月22日（金）18:00から配信開始、9月27日（水）19:00配信終了（予定）
【準決勝2日目】
9月23日（土・祝）18:00から配信開始、9月27日（水）19:00配信終了（予定）
※各出演ラインアップは、配信開始の前日にチケット発売ページで発表されます。
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