4月15日(土)、16日(日)の2日間にわたって開催された「島ぜんぶでお~きな祭 第15回沖縄国際映画祭」。16日(日)、那覇市の桜坂劇場ホールAで、『釜石ラーメン物語』が上映されました。本作は、釜石でラーメン屋「小川食堂」を営む父と妹の所に、音信不通だった長女・正実が帰ってきたことから一騒動が起きるという家族ドラマ。コメディタッチの中に、東日本大震災の記憶をさりげなく織り込んだ作品です。上映前のレッドカーペットで、ひときわ大きな歓声を浴びたのが、本作の主演を務めた俳優・井桁弘恵(いげた・ひろえ)。これから舞台挨拶に向かうという忙しさの中、快くインタビューに応じてくれました。
井桁は撮影で初めて訪れたというロケ地の岩手県釜石市小川(こがわ)町について、「第一印象は緑豊かでのどかな町。震災に遭った場所なので、ちょっと心配でしたが、復興工事がかなり進んでいました。若い人たちも多くて、新しいカフェができていたりしました」と語りました。
主役の『正実』を監督と作り上げるまで
井桁が演じた長女の正実は直情型の激しい役柄。劇中では池田朱那が扮する妹・仲良と壮絶な口喧嘩を繰り広げます。
清楚なイメージの井桁とはだいぶ違う気がしますがという問いに、「自分と真逆だからこそ、思いっきり演じることができて楽しかった」と役にのめり込んだ様子。演じるにあたっては「本読みの段階から自分の中の『正実』を想像しました。それを今関あきよし監督に提案して、またアドバイスをいただいたりと、監督と2人で主役像を作っていきました」と、綿密な前準備があったことを明かします。
さらに、本番に入ると、演じながら「場面ごとのセリフの勢いや息遣い、口調など、そのときの感情を演技にどうリンクさせれば良いのか」と細かな調節を施したそうです。
お互いで競い助け合った家族役の2人
口喧嘩の相手となる池田とは、同じ事務所の先輩と後輩という関係。その印象について「めっちゃ良い子です。優等生のイメージ。でも今回ガッツリ組んだことで、距離がグッと縮んだと思います」と振り返ります。さらに「お互い負けず嫌いだから(笑)、役者として負けたくない」と切磋琢磨した様子。その感情があったからこそ、演技として昇華できたのかもしれません。
そんな2人を見守るお父さん役は、ベテラン俳優であり監督しても活躍する利重剛。井桁は彼について「温かい方でずっと見守ってくれました」と語ります。「劇中のお父さんは弱々しいですが、利重さんご本人はそんなことは無くて。いつもニコニコしていて、でも的確なアドバイスをサラッとしてくれたり。とても助けられました」と全幅の信頼を寄せていたようです。
本作はすでにロケ地の岩手県で上映されました。地元の方に見てもらうことに対して、当初は不安があったと言います。
「私は福岡出身で震災の体験者ではありません。どんなに丁寧に演じてしても、当事者ではないから分からないこと、理解できないところがあるはず。受け入れてもらえるかどうか…」
しかし、その心配は杞憂に終わったのこと。
「地元の方の感想を読ませてもらいました。重くなりすぎず、ポップな要素もあって優しくて見やすい映画とか、中には涙を流したという人もいました。それを知ってホッとしました。受け入れてもらえたんだなって」
最後に、地元以外の方々にもぜひ見てもらいたいと言い、映画の魅力を語りました。
「誰しもが胸に秘めている家族への思いが主軸になっている作品です。また釜石の魅力である人の温かさも魅力。映画を見たあと、家族に連絡したくなると思います」
『釜石ラーメン物語』は7月より新宿K‘s cinema他で全国順次公開予定。上映スケジュールについては作品のオフィシャルサイトをご覧ください。
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