タイ社会の理解も深まる 『プラロットとメーリー』故ソムポート・セーンドゥアンチャーイ監督 追悼上映&トークショー開催

10月13日(金)~10月15日(日)の3日間、よしもと祇園花月をはじめとした京都市内の各会場にて「京都国際映画祭2023」が開催されています。今年の京都国際映画祭では、当映画祭の名誉実行委員長を長年務められた中島貞夫監督の追悼上映をはじめ、京都の各所で映画上映や舞台挨拶、アート作品の展示やオンライン企画などが同時に展開され、映画もアートもその他も全部お楽しみいただけます。

出典: FANY マガジン
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初日の13日(金)、京都大学稲盛財団記念館にて、『プラロットとメーリー』故ソムポート・セーンドゥアンチャーイ監督 追悼上映&トークショーが開催されました。

Visual Documentary Project(VDP)は、映像を通して東南アジアを理解することを目的の一つとしているドキュメンタリー公募プロジェクト。毎年、京都国際映画祭で、東南アジアの映画やドキュメンタリーの上映会を実施しています。今回上映される『プロラットとメーリー』(1981年)は、円谷英二監督のもとで特撮技術を学んだソムボート監督の作品。東南アジア大陸部に広く伝わる民話『12姉妹』を題材にしていることで、公開当時タイで大きな成功を収めた一本ですが、日本では配給されなかったため、レア作品となっています。今回は生前のソムポート監督と親交のあった、タイ研究者の平松秀樹氏が字幕と解説を担当。さらに今年のVDPの公募テーマ「笑!」にちなみ、吉本芸人の木尾モデルをMCにトークショーも開催されました。

タイ発のレア作品がいよいよ上映

出典: FANY マガジン
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上映前にはVDP代表で文化人類学者 東南アジア地域研究研究所 准教授のマリオ・ロペズ氏が挨拶し、VDPについて説明するとともに、これまでの活動などを紹介、平松氏と木尾を呼び込みます。木尾から見どころを尋ねられた平松氏は、トランスジェンダーの夜叉という独創的なキャラクターが出てくること、そしてタイでは夫や妻はもちろん大事だがそれ以上に親を大切にするので、それも作品から垣間見られることなどを列挙。木尾からは作中で気になることがあれば、上映後に質問できることも伝えられました。

作品の背景やキャラクターについての貴重な解説も

『プロラットとメーリー』は、貧しさから両親に捨てられた12人姉妹が悲劇に見舞われるなか、末娘だけが我が子を守り抜く。その子がやがて王子となり、数奇な運命に導かれ、母のために奮闘する……という物語。上映後は平松氏が解説を行いました。この話が民話「12姉妹」であることを伝えると、もともとの断片的な伝承はおそらくインドからと話し、各国で共通したモチーフが見られること、絵本版やテレビドラマ版などもあること、末娘が美しく聡明であるというのは東南アジアでよく見られることなど、作品の背景について説明。トランスジェンダーの夜叉やユニークな天人など、作中のキャラクターについての解説では会場から笑いが漏れるシーンも。そして作中にも見られたタイ社会の概念である、親への報恩という最高善=ガタンユーについては、生前のソムポート監督が「子どもたちに親を大切にするというタイ社会の最高善を教えたいために、この作品を作ったとおっしゃっていた」と振り返りました。そしてソムポート監督の人となりについても触れ、タイの特撮映画の創始者であることなどを紹介。「ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団」(1974 年、日本劇場公開1979 年)や「ハヌマーンと5仮面ライダー」(1975年)などの作品についても説明を行いました。

出典: FANY マガジン
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続いてはトークショー。木尾は平松氏の解説を聞いたことでエンディングの意味がわかったと納得の表情。そこからタイのハヌマーンと大人気漫画との共通点、ネットフリックスでタイドラマが人気であること、タイの映画におけるトランスジェンダーなどについてトークが展開。作品の翻訳を手がけた平松氏がタイ語はダジャレが好きな言葉、言葉を楽しむ言語なので日本語のダジャレに訳すのが難しかったという裏話を披露するひと幕も。ウルトラマン訴訟事件についても触れられたほか、来場者からも質問を受け付けるなど、多様なテーマでトークが行われました。

「京都国際映画祭」は2014年より「京都映画祭」から引き継いだ伝統と志を重んじ、「映画もアートもその他もぜんぶ」をテーマに「新しいモノ・コト」にも積極的に取り組んできました。第7回からは柔軟に形を変えてオンラインとリアルの良さを併せもつ、ハイブリッドの映画祭として開催しています。

『京都国際映画祭2023~映画もアートもその他もぜんぶ~』

開催期間:10月13日(金)~15日(日)
場所:よしもと祇園花月、京都市京セラ美術館、京都国際マンガミュージアム、おもちゃ映画ミュージアム、ほか

『京都国際映画祭2023~映画もアートもその他もぜんぶ~』HPはコチラ