大阪・関西万博で、吉本興業が出展するパビリオン『よしもとwaraii myraii館』。オレンジ色の笑顔の球体「タマー」を目印に、野外の「アシタ広場」では連日、コメディショーや体験型エンターテインメントが開催されています。「SNSでバズってるカラオケ盆踊り、あれはなに?」「そもそもwaraii myraii館って楽しいの?」という人もたくさんいらっしゃるのでは……!? そこで今回、わたくし芸人ライター・茜250ccの善家カズマサが、総合プロデューサーの小松純也氏にお話をうかがってきました。

『よしもとwaraii myraii館』は、「こころと身体の健康につながる、笑いのチカラ」をテーマに、“万博でいちばん笑い声が響くパビリオン”を目指しています。そして、「アシタ広場」は万博会場の喧騒からしばし離れ、心と時間にゆとりを生み出す、やすらぎの空間です。私がコメディショーに出演したときも、自然体の姿で楽しむ人や寝転んでリラックスしている人がいて、まさに“やすらぎの空間”となっていました。
万博なのに畳敷きのスペースがあり、なぜかカラオケと盆踊りもできるという、この場所に込められた小松氏の思いとは――。写真担当は芸人カメラマンの番町・長居蒼季。本文・写真ともども、お楽しみください!
「アシタ広場」はプロデューサー公認の”ダラダラ”していい場所
「IKOI(憩い)」の畳は、そこで人々が安らぎ、くつろいでいる姿をみんなが見ることも一つの“展示”になっている、と小松氏は言います。だから畳の上での過ごし方は、正座などかしこまった状態ではなく、横になってダラダラしてほしいとのこと。「IKOI」とは、“寛容と共生”にあふれた場所なのです。
――まず、「アシタ広場」の名前に込めた意味を教えてください。
今回の大阪万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。この“未来”というワードをたくさんの場所で見たり、聞いたりしますが、実はこの“未来”というのはもうわれわれの目の前で始まっているんだ、すでにあるんだよ、という“ものすごく近い未来”っていう意味で「アシタ」という言葉を使いました。

――「IKOI(憩い)」のスペースは、靴を脱いで畳の上でくつろげるスペースです。これには日本文化特有のものを入れたいという思いがあったのでしょうか?
日本は平地が少ないためか、みんなでまとまってひとつの場所に住むという性質があります。江戸時代の長屋なんかは、4、5畳程度の広さに、家族5人くらいが住んでいます。そこではご飯を食べるときにはちゃぶ台を置き、寝るときにはちゃぶ台を片付けて布団を敷き、仕事もするときはその布団をしまって……という、けっこうミニマルな空間の使い方を昔からやっていました。
だからこそ、日本人は小さなものをつくったり、いろいろ工夫したりすることが得意なんです。そういう点を表現したいな、という思いがありました。
――“日本人らしさ”を表現するには、畳はうってつけの素材だと思います! 生活様式を感じさせる以外にも何か意図はあるのでしょうか?
歩き疲れたところで、クツを脱いで、畳に上がって、ゴロゴロする解放感を味わってほしいな、というのがあります。万博では、いろいろなパビリオンを見て学ぶなど、みんな外を向いて歩いていると思うんですけど、そうしたなかで家族とか、一緒にきた仲間とかと“顔を合わせる瞬間”が生まれる場所をつくりたい、というのがありました。そこで、すごく大事な時間をみんなで過ごしている、ということを意識してもらえれば、と。
――それがミライに繋がっていく「アシタ広場」なのですね。
畳でゴロゴロするっていうのは、日本人特有のものじゃないですか。それをあえて、壁のないところに置くと、まわりの人がゴロゴロしている、楽しそうにゆっくりしているところが見えますよね。それがいっぱいあると、お互いに作用しあって、全体が”ダラダラしてええねんな”っていう空気に支配されるでしょう。そんな未来がいいなあ、めっちゃウェルビーイングやと思って提案しました(笑)。
万博でカラオケ盆踊りも!?
アシタ広場では毎日、さまざまな体験型のエンターテインメントや、コメディショーが開催されています。世界中から多くの人々が訪れる大阪万博で、吉本はどのような“笑い”を表現しているのでしょうか。広場では夜になると「盆踊りのアシタ」が開催され、SNSなどで凄まじい注目を集めています!

――「アシタ広場」では、吉本興業ならではの「笑い」も楽しめます。
万博は世界中の方々がいらっしゃるので、基本、ノンバーバルなものや、文字をスクリーンなどに映して面白味が増すようなものが中心になっています。また、芸人さんたちはパフォーマーであり、クリエイターでもあるので、芸人さんが立案した企画やショーの開催も予定されています。
吉本興業さんはどう言うかわかりませんけど、わたしは玉砕覚悟の挑戦的な企画もどんどんやっていいと思っています(笑)。こういう機会をきっかけに、日本を飛び出して世界で活躍する芸人さんがたくさん増えたらいいなと思います。
――そして、夜にはなんと盆踊りとカラオケを組み合わせた参加型のエンターテインメントが開催されています! なぜ万博で“盆踊り”をやろうと思ったのですか?
わたしが高校生のときに住んでいた地域で「あおぞらカラオケ」というものがありました。公園でおっちゃんやおばちゃんがラジカセからカラオケを流して、ものすごく楽しそうに歌っていたんです。そのときの光景がずっと忘れられなくて。
またもう一つ、むかし社員旅行で熱海に行ったとき、社交ダンス場みたいなところにカラオケがあったので、当時流行っていた米米CLUBの歌をみんなで歌っていたんですね。そうしたら、僕たちのカラオケに合わせて、社交ダンスのおじさんおばさんたちがクルクルと社交ダンスを踊り始めたんですよ(笑)。
――それはとてもシュールな光景ですね(笑)。
カラオケでも踊れるんや!って驚いて。またこれが何の曲を歌っても、合わせて踊ってくるんですよ(笑)。アイドルソングでも、ロックでも、ポップスでも、タキシードとドレス姿のペアが踊り出すんです。
それで、世界の方に向けたエンターテインメントを考えたとき、海外にはカラオケが好きな方や興味がある方が非常に多いので、カラオケと踊りで何かできないかなと考えました。
――まちのお祭りに来た感覚や旅行先の感覚のような、どこか懐かしい雰囲気を感じます。
スーパー銭湯の広間で宴会をしているみたいなイメージですね。そんな感じがいいかなって。万博でイキらんと、楽しいことを見せるというような。その力を抜いた楽しいことと、いまの時代のテクノロジーを合わせてLEDに笑顔が映るような仕組みにしています。
ココロもカラダも健康になれる“お清めパビリオン”!?
畳でダラダラして、ステージで行われるショーや盆踊りを見て……これだけ聞いてもすごくリフレッシュできそうなのですが、実はwaraii myraii館は全体で、ココロもカラダも健康になるような“仕掛け”になっているといいます。

――アシタ広場に訪れた人々が、心身ともにリフレッシュできるポイントはどこだと思いますか?
waraii myraii館に訪れた際はまず、エントランスの「タマー」の中にあるMASARU OZAKI氏の作品に触れてほしいです。そこでの体験を通じて心の中の“凝り固まったもの”がとれて、固定概念をほぐして“心のお清め”をしたのちに、広場でゴロゴロしていただいたり、ショーを見て笑って楽しんだり、盆踊りで歌って踊ったりして“自分に戻る瞬間”をつくっていただいて、もう一段階、“心をお清め”してもらえたらと思います。
――なんかお清めパビリオンみたいになってません!?(笑)
先日、仕事でお会いしたメンタルフルネスの先生と、座禅のお坊さんが同じことを言っていたんです。なにも難しく深く考えずにリラックスしたなかで「自分がいま生きているということを考えてほしい」と。“何もしない”“頑張らない”ということを坐禅で経験してほしいと言っていました。
その考えに近くて、このwaraii myraii館も“自分がこんな感じで楽しく生きている”ということを実感していただきたいです。“禅の境地”ですね(笑)。みんな穏やかに生きていけるし、いま生きている、というメッセージがあります。
――みんな忙しい、いまの時代にぴったりのパビリオンになっていると思います。
健康には「肉体的な健康」と「精神的な健康」と「社会的な健康」があるのですが、それらに向けたミライへの提案をこの『アシタ広場』でやっていきたいですね。
なるほど、なんか……点と点が線で繋がった感じがするぞ! 小松氏のお話、先日インタビューしたタマー内部の展示作品を担当したMASARU OZAKI氏のお話、そしていまたくさんの人の笑顔であふれる「アシタ広場」の様子を見て、すべてが繋がりました! 現代アートや、コメディショー、盆踊りなど目立つコンテンツに気を取られていましたが、waraii myraii館は“笑い”がもたらす「ココロとカラダの健康」のパビリオンであると、わたしは感じました。
――今後、waraii myraii館に足を運ぶのが、また自分がアシタ広場のステージで出演するのが本当に楽しみになりました! では最後に、これからwaraii myraii館を訪れる方々にメッセージをお願いします!
waraii myraii館が、(万博会場のなかで)いちばん気軽に楽しく過ごせるパビリオンだと思います。構えずに、クツを脱いでゴロゴロしにきてください!
いかがでしたか? わたしも、コメディショーのオープニングアクトに出演したときに何度か舞台上からアシタ広場を見ましたが、横になってくつろいでいる方や、家族で仲よくおしゃべりしている方、タマーの日陰で休んでいる方など、とてもリラックスした空間になっていて、“万博のオアシス”のようは場所になっていました。
コメディショーや盆踊りは連日、大盛り上がりです! 皆さんもぜひwaraii myraii館訪れて、笑って、ダラダラして、健康になってみませんか!?